現在でも根強い人気のヨーロッパのアンティークボタン。
ジュエリーのように美しいもの、キャンディーのようにカラフルで可愛らしいものなど、見ているだけで楽しくなり、いくつでも欲しくなってしまうというボタン好きさんはきっと私だけではないはず。
今日は私がアンティークメルスリーのショップを始めた原点でもあるヨーロッパのボタンの歴史についての覚書です。
高額で取引される古いボタンたち
アンティークボタンはメルスリーの中でも小さく可愛らしくお手頃なアイテムです。
大抵のご家庭のソーイングボックスに古いボタンや、新しく洋服を買った時に予備で付いてくるボタンなどが入った「ボタンボックス」があることだと思いますし、着古したお洋服を捨てる時もかわいいボタンが付いていたら一応それだけはずして大事に取っておくというお母さんも多いはず。
布でできたお洋服よりも耐久性のある素材でできているため、ボタンのコレクションが増えていくわけです。
そんなどこの家にでも眠っている「古いボタン」ですが、コレクターさんにとってのアンティークボタンは、年代やデザインによって宝石ほどの価値を持つことも。
実際にオークションの世界では、一個数万円を超すアンティークボタンも珍しくはありません。
そのように価値が高いのは一体どんなボタン?なぜ?と興味がわいてきませんか?
地位を示す印だったボタン
ボタンは十字軍によってイスラムよりヨーロッパに伝わったとも言われています。
がそれ以前より、古くは5世紀ごろからヨーロッパにも存在していたようです。
当時はボタンは洋服を留める役割ではなく、着けている人の地位を表す役割だったそうで、現代で言うならば弁護士バッジのようなものでした。
そして当然誰もが着けられるものではなく、高い地位に就いたものだけに与えられた印だったわけです。
ジュエリーとして華やかに流行
12~13世紀以降、徐々にボタンはジュエリーなどの宝飾品の一種として貴族を中心に流行し始めます。
高級で贅沢な装飾品に財をつぎ込み破産する貴族も現れ、奢侈禁止令(しゃしきんしれい いわゆる贅沢を禁じ倹約を推奨する法令)の対象となったこともあるそうです。
余談ですが、当時宝石並みに高価だったアンティークレースもこの奢侈禁止令の対象だった時代があります。
そのような禁止令が出てしまうほど人々を夢中にさせたボタン。
貴族階級の人々にとっては流行のお洒落であり、女性のドレスを華やかに飾り、男性の衣装のアクセントとして皆の心をひきつけたアイテムだったのです。
フランス「ボタンの黄金期」
18世紀から19世紀にかけてのフランスは「ボタンの黄金期」と呼ばれる時代です。
金銀はもちろん、シルク糸や宝石など贅沢な素材を使ったボタンが多く作られた時代です。
高価で華やかなボタンは貴族たちを中心にファッションアイテムとしての流行が続きました。
マリー・アントワネットの肖像画が描かれたボタンが大流行したこともあったと言われており、私はまだお目にかかったことがないのですが古びたボタンを見かけるとついつい彼女の姿を探してしまいます。
またハンティングの衣装用にと、狩猟犬や鹿、猪など動物をモチーフにした狩猟ボタンも流行しました。
制服ボタンの全盛期
19世紀にはいるとフランスではボタンの用途やデザインが様変わりし始めましす。
ナポレオンの軍事強化により制服ボタンがたくさん作られたのが特徴でもあります。
産業化が進んだこともあり、このような制服ボタンを大量生産することが出来るようにもなりました。
当然華美な装飾は必要なく、シンプルなメタル素材の実用的なボタンです。
ところが、ボタンで地位を表す文化は残っており、ボタンのデザインによって所属部隊や軍隊の中での階級を示すこともあったようです。
そのため、様々なデザインのユニフォームボタンが残っており、アンティークボタンの中の一つのカテゴリーとして希少価値が高いものも多くあります。
ヴィクトリア期は黒!
19世紀後半のヴィクトリア期には黒ガラスでできたボタンがフランスで大流行します。
当時イギリスで流行していたジェット(黒玉)製のボタンやジュエリーを模したのが始まりで、黒ガラスのボタンを「フレンチジェット」と呼ぶようになりました。
ヴィクトリア期の黒ガラスの流行についてはヴィクトリアンの黒ガラスも併せてごらんください。
アールヌーボー~アールデコ期
20世紀にはいるとアールヌーボー期がやってきます。
言わずと知れた曲線美のデザインの家具やジュエリーが多く作られた時期です。
この時期はボタンももちろんアールヌーボー。
個人的にはこの時期のボタンの質感やデザインが一番好きです♪
1910~1930年頃はアールデコ期。
第一次世界大戦の影響を受けた年代でもあります。
幾何学的なデザインに加えて、プラスチック素材のボタンが増えてきました。
実際に現在では素材の稀少さから注目されているベークライト製のボタンの多くは、アールデコ調のデザインだったりします。
セルロイドなどもこの時期のボタンの素材の特徴です。
戦後華やかに発展した樹脂ボタンの世界
1945年以降はボタンと言えば樹脂製、というほど素材の主流となったプラスチック。
強くて軽くて丈夫、とボタン以外にもおもちゃや食器などあらゆる場面で現在でもつかわれています。
この頃のボタンはカラフルでレトロな雰囲気が特徴。
おばあちゃんが若かりし日に着ていた古着などで見かけたことがある人も多いかもしれません。
この頃くらいのボタンはご家庭のボタンボックスの中に眠っている事もあり、意外と可愛く現代のシンプルなお洋服にも似合うことも。
現代でも愛されるアンティークボタン
アンティークボタンはその美しいデザインから、今でも私のような熱烈なファンがいるアイテムです。
そして昨今のアンティークブームから再認識されたのか、現在現行品として売られているボタンの中には「アンティークスタイル」や「アンティークデザイン」のものが多く見られます。
今から10年後、20年後…50年後にはそんなリバイバルアンティークのボタンが、またボタンファンに発掘されていくのかと思うとわくわくしてしまいます(笑)
銀色アンティークWEBショップでも様々な年代、スタイルのアンティーク~ヴィンテージボタンをそろえております。
ボタンマニアの目線で厳選して選んできたものですので、きっとお気に入りが見つかることだと思います。
銀色アンティークWEBショップ アンティークボタン
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