絵画の中で上品にほほ笑む貴婦人の姿には、何百年の時を経てもうっとりとため息が出ます。
が、肖像画を見る時どうしてもついついお衣装の方に目が行ってしまうのは私だけでしょうか?
一目でシルクと分かるなめらかな質感まで描写した名画の中には、当時の最高級品であったレースも詳細に描いているものが少なくはありません。
かつては金や宝石よりも価値が高いとされていたレース。
それ自体が富と権力の象徴だったと言われています。
自身の身に着け肖像画を描かせることが、当時の有力者のステータスだった事が想像できます。
そんな風に名画の中に素晴らしいアンティークレースを探すのも鑑賞の楽しみです。
本日はレースが素敵な絵画の中でも、とりわけ気に入っているこちらをご紹介したいと思います。
アルトワ伯爵と妹クロチルドの肖像 ルーブル美術館
この絵はフランス国王シャルル10世の幼少期の姿を描いた王家の肖像画です。
仲の良さそうな兄妹の姿が生き生きと描かれています。
この絵が描かれた時6歳だったシャルル10世は、アルトワ伯爵(Conte d’Artois)と呼ばれていました。
妹のクロチルドは4歳だったそうです。
装飾やレースがふんだんに使われたお衣装でおめかししています。
汚し盛りの幼い子供にこれほどの繊細で上質な衣装を纏わせるのは、さすがに王家の家族の品格ですね。
この肖像画、特に妹のクロチルドの衣装に使われているレースの美しさといったら…
4歳の少女はまだ頭にボネをかぶっています。
その縁取りはちらりとしか見えないのに素晴らしく繊細なレースだとわかります。
首元でリボン結びされたシフォンも可愛らしさを引き立てています。
更に大きくデコルテが開いたドレスの胸元には刺繍が施された繊細なレースの装飾が。
そしてスカートに重ねるように贅沢に使われたレースといったら…
これはボビンレースの一種であるフランドルレース(dentelle de Flandre)だと記録されているそうです。
また袖元に幾重にもフリルをつけたレースも、同じくフランドルレースなんだとか…
これほどに豪華な衣装を身に着けて、愛らしく微笑む少女。
たった4歳の女の子なのにやはり衣装に負けない気品が漂っています。
豪華なレースを身に纏った肖像画には、富と権力を見せつけるような押しの強いものもあります。
しかし、この幼い兄妹は自然に気負いなく着こなしているところが素敵です。
生まれながらの気品ですね♪
やはりいくら高価で素晴らしいお衣装で着飾っても「品」がないと、ですね。
こちらの絵は、ルーブル美術館のinstagramから詳細部の拡大もご覧いただけます。
アルトワ伯爵と妹クロチルドの肖像