アンティークレースと現行安価レースの違いとは?

アンティークレースと一言で言っても、作られた年代や素材は様々。
目が飛び出るような高価なものやお手頃価格のものまで価値もピンキリです。
とは言え、現行品として売られているレースに比べると手に入りにくく、どうしてもお値段が張ってしまいます。

WEB検索すればびっくりするようなお安い現行品レースがたくさん。
300cmで300円!など、このお値段なら手芸材料として手軽に使えますね。
当ショップの同じようなサイズのアンティークレースなら、たいていはゼロが一つ多い3000円~となると思います。
それでも蚤の市価格でフランスから直送するように頑張っておりますので、アンティークレースの価格としては決して高すぎるお値段ではないという自信があります。

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現行レースのお安さを見るといつも考えてしまうのは、アンティークレースとの違い。
普通に考えたら安いうえに新品、ほしい量だけいつでも購入できる現行レースの方が良いように思えます。
では、なぜこれほどアンティークレースを愛する人がいらっしゃるのでしょうか?
今日は、アンティークレースを現行品と比較しながら、その魅力を考えてみたいと思います♪

 

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1. レースの素材

現行レースの多くが石油を原料とした合成化学繊維で作られているのに対して、アンティークレースのほとんどが天然繊維で作られています。
コットンやリネンが一番多く、シルク製の上質なものも珍しくはありません。
合成化学繊維の人工的なツヤや質感と違い天然繊維で作られたアンティークレースは自然で温かみのある風合いが特徴です。
丈夫さやお手入れが簡単なところなど、合成繊維にも利点は多く使い道によってはこちらの方が向いていることもありますのでどちらが秀でているという話ではないのですが、天然素材で丁寧に作られたレースは自ずと価値が上がります。

アンティークレースにも科学的な技法で作られた繊維、レーヨンが使われている事もあります。
レーヨンは1800年代にフランスで初めて作られた繊維なのですが、上記の合成化学繊維と違う点は原材料にパルプやコットンなどの天然素材を使っているところ。
薬品を使ってこれらの天然繊維を紡糸して作られるため、石油が原材料の合成化学繊維と区別して「再生繊維」と呼ばれるそうです。
なお、レーヨンは当時高価だった絹に似せて作られたそうです。
銀色アンティークが通う蚤の市は、フランスでも「絹の街」として知られている、絹産業の盛んなリヨンの街にあります。
当時は絹に似せたレーヨン繊維の製品も取引されたのかもしれません。

個人的には…現行品の合成繊維のレースの質感はどうしても「下着のレース」を連想してしまいます。
下着はお洗濯の頻度も高く合成繊維が理に適っているのですが、お洋服やバッグ、アクセサリーなどに多用されているのを見かけるとどうしても下着がちらっとはみ出しているような印象を持ってしまいます(笑)
あくまで私個人の感想です。

このように、素材による見た目の印象の違いは、アンティークレースと現行レースの大きな違いの一つだと言えます。

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2. レースの技法

織り、編み、刺し…とレースの技法の種類は数々あります。
基本的な製造過程はおそらく19世紀も現代も大きく違わないと思うのですが、最大の違いは機械で作られているところ。
アンティークレースの多くは職人さんが手仕事で作ったハンドメイドです。
熟練の腕で丹念に作られたものは精密に機械で作られたものと見分けがつかないほどのものもありますが、やはり人の手で作られた温かみのようなものが伝わってきます。
同じパターンの繰り返しでも、ほんの少しずつ表情が違うモチーフであったり、微妙な強弱の付け方に人間の心を感じるとでも言いましょうか…
アンティークレースの買い付けの際には、この「ハンドメイドかマシンメイドか」の違いは重要な確認事項にしています。

ボビンレースは1920年ごろにマシンメイドのものが一般にも流通し始めましたが、レースの産地では20世紀中ごろになるまでは手織りのレースが主な産業だったといわれています。
当時はマシンが高価だったこともあり、マシンメイドのものの方が高値を付けられたこともあったのだとか。
現在販売されているボビンレースはもちろんマシンメイドのものがほとんどですが、ル・ピュイ Le Puy en Velay などボビンレースの街として知られているところでは、ハンドメイドの製品も販売されています。
当然ですが「fait à la main(ハンドメイド)」とラベルが貼られ、機械製のものよりはお高めのお値段が付けられています。
やはり、人の手で時間をかけて作られたものには価値があるというわけです。

ニードルレースは刺繍をベースに造る技法です。
現代では家庭のミシンでも刺繍図案をプログラムして自動で刺してくれる機能がありますが、アンティークのニードルレースは人の手で刺繍されたものが多くあります。
一針一針手刺繍で進めていったと想像して全体のレースを見ると、相当の手間暇が費やされたんだろうな…と想像を絶することがあります。
現行品として販売されているニードルレースは、ほとんどがマシンメイドです。
図案と一ミリのずれもない端正な仕上がりになりますが、手刺繍の温かみは感じられません。

クロシェレースに関しては、私の知る限り現行品にも機械編みのものはありません。
(クロシェ編みの機械自体が存在しないと聞きます)
元々家庭で女性たちが自家用として編んでいたものが多いと聞きます。
そのためハンドメイドというよりはメゾンメイドと呼ばせていただいています。
今でも実家の飾り棚などにお母さんやおばあちゃんが手編みしたレースのドイリーなどが掛けられているおうちも多いのではないでしょうか?

モチーフをつないで作ったデザインのものなど、素朴でかわいらしいのが人気ですが、現行品でこのようなお品が安く売られているのを見ると、人の手で作られたものがどうしてこんなお値段で販売できるのだろう…?と不思議に思うことがあります。
どなたかその理由をご存知の方がいらっしゃったらぜひご教授いただきたいです。

レースの技法、特にハンドメイドかマシンメイドか?を考えた時、アンティークレースと現行レースの違いの傾向が見えてくると思います。

 

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3. アンティークレースの歴史的価値

アンティークレースにあって現行レースには絶対にないもの、それは長い年月を経たという歴史的な価値です。
古ければ良いというわけではありませんが、アンティーク品の特徴としては古いものは価値が高くなるのが一般的。
中でも消耗しやすい繊細なアンティークレースは古いものに高値が付くことも珍しくはありません。

戦時中に燃えてしまったものや破棄された高価なドレス類が多くあったため、戦前のもので状態良く残っているものはさらに価値が高くなります。
アンティークレースには年代を示すものが付けられているわけではないため、実際の製造年を確証するのはむつかしいのですが、売り主さんの説明や元の持ち主の方の人生(昨年90歳で亡くなったマダムのお母様の遺品、など)を手掛かりにしています。

このように歴史的価値を考えた場合、アンティークレースと現行レースにはやはり大きな違いがあると言えます。

 

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4.アンティークレースのストーリー性

歴史的価値と似た部分ではありますが、アンティークレースには必ず元の持ち主が存在します。
その方がどのようにこのレースを扱ってきたのか、元々はどんなドレスにどのように使われていたのかなどなど…
ストーリーを追及すると一枚のアンティークレースからわくわく感があふれだします。
レースの端に当時のドレスの布の一部が残っていたり、ネームやイニシャルのモノグラムが刺繍されていたり。
大切に薄紙に包まれ、きれいな箱にしまわれたレースがあったり。
端っこにワインのシミが付いたウェディングドレスのベールがあったり。
詩的な美しい言葉のメッセージのメモが同封されていたり。
物語を感じずにはいられないアンティークレースがたくさん存在します。

このように、元の持ち主が大切に温めていたストーリーは現行レースには決してない特徴だと言えます。

 

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5. アンティークレース蒐集

美しいモチーフや珍しい技法などに魅せられてアンティークレースを蒐集しているコレクターさんが世界中にたくさんいらっしゃいます。
そんな蒐集家の方にとってアンティークレースは一つ一つが違う魅力にあふれていることだと思います。

レースを蒐集している方は昔からいたようで、見本帳のようにスクラップされた古いレース帳に出会うことも。
スクラップした方はアンティークではなく当時のレースを集められたようですが、このレース帳自体が年月を経てアンティーク品となっております。
大量生産が為されなかった時代だからこそ、このような自作の見本帳にも特別な価値が付きます。

見本帳好きな方は私の他にもたくさんいらっしゃると思いますが、このようにお気に入りのレースを集めてレース帳を作るのも、とても面白いと思います。
もちろん、アンティークレースに限らず現行品や古着についているものなど、気に入った刺繍地や布地などを自由に蒐集して世界に一冊しかない見本帳を作ってみてください。
たくさんのレースを見て触って調べて…としているうちに、自然と上質なレースを見分ける目利きの力がついてくることを保証します。
ちなみに、レースをスクラップする台紙としては下の写真のようにくすんだブルーが一番似合うと、個人的には思っています。
ご参考までに!

蒐集の観点で見てみると、やはりオリジナリティが高かったり、希少価値があったり…とアンティークレースに求められる要素がたくさんあります。

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アンティークレースと現行レースの違い、まとめ

レースの持つ繊細な美しさと、それが作られた工程、使われてきた歴史など、アンティークレースにしかない魅力がたくさんあります。

そして、素材や技法など全く同じレースを現代に再現した場合どのくらいのコストがかかるのかを考えると、アンティークレースの価値に気付くのではないでしょうか。

世界的にアンティークレースの人気が高まってきた数年前から、やはりここフランスでも多く扱われるようになりました。
そして、人気に伴い蚤の市でのレースの価格も高騰、さらに外国からの買い付け(私も含まれますね)が増えたため、フランス国内の市場には良質のレースがもうほとんど残っていないとさえも言われています。
とは言え、まだまだどのくらいのお宝が眠っているかは未知数の蚤の市。
良質のものにこだわると数多くは扱えませんが、少しずつでもご期待に沿えるご紹介をしていきたいと思っています。

というわけで、お天気が悪くて蚤の市へ行けなかった日曜日。
アンティークレースと現行レースの違いについて考察してみました。
レース選びのご参考にしていただければ幸いです。

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フランスアンティーク雑貨WEBショップの新着商品 お知らせ

2016年1月9日土曜日、銀が多めな雑貨類などの新着商品を販売開始しております。
いずれもフランスの蚤の市で出会った一点ものの希少なアンティーク雑貨です。
売り切れ品は二度と同じものをご提供することが出来ませんので、お早めにチェックしてくださいね。
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