銀色アンティークに寄せられる質問の中で「アンティークとヴィンテージの違いは?定義は?」というものがあります。
古い品物を表す言葉として、アンティーク以外に「ヴィンテージ」や「ジャンク」「レトロ」などが使われる事がありますが、実際はどのようにして定義づけているのかは興味深いところです。
結局のところ、アンティークって、ヴィンテージって何?
そんな古物を表現する言葉としてのアンティークの定義について考えてみました。
「100年経ったらアンティーク」はアメリカの関税法によるもの
一般的によく聞くのは「100年以上経ったものはアンティーク」という定義づけです。
この「100年以上」はアメリカの関税法が定めたアンティークの定義です。
関税は国境を超えてものを輸出入する時にかかる税金ですが、アンティーク品の場合はこの関税がかかりません。
そのため、「アンティークとは100年以上たったもの」と、きっちりと定義付けて線引きする必要があるのです。
つまり、関税法によると100年以上たった品物は無税、という事なのですね。
とは言え、実際の個人間での郵送などの場合は100年以上の経年を証明する書類などを準備するのは難しく、絵画や美術品などの鑑定書が着くような品物が対象となる事が多いようです。
つまり「100年経ったらアンティーク」は輸出入の際の税金のために決められた便宜用の定義というわけです。
この考え方でいくと、1915年に作られたものがあったとして、2014年まではアンティークとは呼べなかったけど、年が明けて2015年からは突然「アンティーク品」になるわけで。。。
税金用に決められた「100年」という数字にこだわりすぎるのも、おかしな話なのかもしれません。
アールヌーヴォーとアールデコ
アールヌーヴォー、アールデコはご存じのとおり19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に流行した芸術様式です。
この、2時代までを「アンティーク」、それ以降は「レトロ」や「ヴィンテージ」と分ける事もあるようです。
特にアールヌーヴォー期はパリではベルエポック(良き時代)と言われ、パリ万博が行われた華やかで繁栄した時代でもあります。
この時代に芸術品や美しい衣装、ジュエリーなどが多く作られそれが時を経て魅力的なアンティーク品になっているのです。
蚤の市でも品物の年代を尋ねると「1920年か30年頃」や「1920年以前」という答え方をされることがよくあります。
デザインや様式で年代を判断する場合は、このアールヌーヴォー、アールデコのスタイルが参考になるのだと思われます。
詳しい年代はアールヌーヴォーは1890年頃から1910年頃、アールデコは1910年頃から1930年頃と言われています。
その後1960年頃、アメリカでアールヌーヴォーのリバイバルが起きたため、年代を判断する際はちょっと注意が必要。
フランスにはこのようなリバイバルの品は少ないそうですが。
「〇〇様式」「〇〇スタイル」に要注意
ヨーロッパでは、骨董品の年代を表すのに「〇〇スタイル」というような呼び方をよく耳にします。
「ルイ14世様式」や「ヴィクトリアン」など、耳にされたことがあるかもしれません。
これは文字通り時の王や女王が好んだスタイルとその年代を表す言葉として使われます。
しかし、蚤の市や骨董市で売られているものの中には、様式を真似ただけのものも多数存在するのが事実。
最近でも「アンティーク風家具」などが多く販売されているように、必ずしも様式と時代がマッチしているとは限りません。
見た目だけで年代を判別するのは熟練の技が必用ですね。
カジュアルな蚤の市では店主も適当な時代を言ってきたりもしますので、「〇〇様式だよ!」とすすめられても、鵜呑みは禁物です。
戦前、戦後という言葉が飛び交う蚤の市
結局のところ、いつの時代のものが「アンティーク」なのだろうか?と話は振り出しに戻ります。
関税法の100年経過か、アールヌーヴォー&デコ期以前か…
実際のアンティーク市の現場では、「戦前」「戦後」という言葉での説明をよく耳にします。
たいていは第二次世界大戦(1939-1945)を境に戦前戦後とされていますが、分野によっては第一次世界大戦が始まる1914年以前を「戦前」と呼ぶことも。
紙モノは戦争で燃えたり破棄されたものも多く、1914年以前のものに特別な価値があると言われます。
出版年のわかる書籍や消印のあるポストカードを選ぶときはこの年代を意識しています。
分野によって希少価値の上がる年代が違うという事は、やはりそれによって「アンティーク」と呼ぶか否かも変わって来るのではないでしょうか。
ジュエリーやコイン、メダイ等、長い年月を経ても比較的消耗が少ないものはそれなりの月日を経たものが「アンティーク」と呼ばれるでしょうし、紙、繊細なシルク布やレースは、良い状態で保存された戦前のものであれば十分に希少価値が高いと思います。
また、年代を質問した際に「19xx年頃」と答えられた場合でも、それが戦前か戦後かで考えている時があります。
多くのものが失われた戦争の中でも消失せずに無事に現代まで残ったもの、そういう観点での線引きだと思います。
そういう理由で、個人的には戦前戦後がアンティークと呼ぶ境界線ではないかと思っています。
結局曖昧ですが。。。(笑)
それ以外にも、古さ以外の希少価値がありますし、デザインの美しさによる価値、状態の良さの価値、物にまつわる由来から来る価値etc…
アンティークと呼ぶかどうかだけではそのものの価値は決まらないものだと思います。
あまり細かい年代にはこだわらずに、物の魅力を感じとってセレクトしていきたいものですね。